第72章

病院。

久世美月は窓辺に立ち、顔色を失っていた。スマホを握る指の関節まで白く浮き、今にも脆く砕けてしまいそうな細さで、そこにいた。

久世悠真が病室へ入ってくる。無駄のない、すっと伸びた体躯。刃のような眉峰に、彫刻刀で刻んだみたいな鼻筋。黒い瞳は冷えた静けさを宿しながらも、美月へ向けるとわずかに温度を帯びた。

近づき、色の薄い唇を開く。

「美月。知り合いに頼んで手に入れたんだ。貴婦人向けの美白クリームで、傷跡にも効くらしい。試してみろ」

続けて、宥めるように言う。

「湊兄さんのこと、そんなに心配するな。裁判をやるって決めたなら、俺が補佐につく」

妹には昔から甘い。業界では氷刃みた...

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